食卓美学総論 レッスンレポート 「長月のおもてなし おしのぎのひと皿とシメのひと皿」

おしのぎの一皿がもたらす効果についても教えてもらいました

少し涼しくなってきた札幌で、8月20日、食卓美学総論のレッスンが行われました。この日のテーマは「長月のおもてなし おしのぎのひと皿とシメのひと皿」。日本人の食について、科学的根拠に基づいた食べ方のリズムとデザインについて楽しく学ぶことができました。

お重の上に小さな柿の実。老鴉柿(ろうやがき)という種類だそう
かわいらしいお重の中には季節のお花が

テーブルには、9㎝角のかわいらしい重箱がセットされ、ふたの上には秋を感じさせる小さな小さな柿の実が…。荒井三津子先生の講義は、「脳は味覚より、視覚を優先する」というお話からスタート。人間が受け取る情報のうち、8割が視覚からといわれます。かつて第一印象の大切さを説いた本がヒットしましたが、食事も視覚が大事ということ。そこでやはり、器や食卓デザインの力が重要になってきます。おいしく食事をいただき、楽しい時間を過ごすためにはまず視覚というわけです。

四角いお盆の上に丸い皿と四角いガラス皿。直線と曲線が生み出す美しさ

お皿の使い方で、「丸いものは四角いお皿に、四角いものは丸いお皿に盛ったほうがよりおいしそうに見えます」と三津子先生。これは、直線と曲線の関係であり、東洋の陰と陽の関係とも繋がるそう。食だけでなく、暮らし全般のデザインに取り入れることができ、ほんのちょっとのことでもバランスが大事なのだと視覚から実感できます。

本日のおしのぎ5品

そして、この日のテーマでもある「おしのぎ」について。オードブルや前菜を煌道では「おしのぎ」と言います。ちょっと空腹をしのぐという意味から「おしのぎ」と呼ぶようになったそう。20分ほどかけて、このおしのぎのひと皿を味わうのが煌道流。この食べ方が、実は健康にもつながり、ダイエットにも関係してくるそうで、科学的見解からの三津子先生のお話にみなさん大きく頷いていました。

本日の焼き物。ブリを使いました

そして、今回の家庭懐石は、このおしのぎのひと皿に注目でした。野菜、キノコ、海藻を使った5品が少しずつ盛られており、ゆっくり味わうことができました。発酵調味研究家でもある筒渕信子先生によるおいしい料理は、どれも優しい味付け。おしのぎのあとに順に登場したサラダや焼き物なども絶品。家庭料理でも活かせそうなアイデアがいっぱいなのも魅力です。

締めの五目おこわと味噌汁、香の物

ここでは書ききれないほど、充実した内容の食卓美学総論。次回は9月17日(金)10時30分~13時30分。2年間の総まとめのレッスンとなりますが、もちろん初めての方も歓迎。煌道の神髄に触れられます。10月からは新たな食卓美学総論がスタートするので、興味のある方は体験も兼ねてぜひ9月にも参加を。https://kodo-japan.org/

 

レポート/中村昭子